『ドームで上映会』で開催する映画上映会の法律面について

「著作権法第38条第1項本文」により、「無料・非営利(無報酬)の映画上映会であれば、権利者の許可を得ることなく無断で実施して構わない」ことになっています。

著作権法第38条第1項
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金 (いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。) を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

『ドームで上映会』で開催する映画上映会に関連する法律面は、次のとおりです。

この記事は、秋葉原法律事務所の小早川真行弁護士から頂いた回答書をベースに記事としてまとめ、その後に改めて小早川真行弁護士の監修を受け、許諾を得た上でインターネット上で公開したものです。記載内容は全て2018年3月9日時点のものとなります。

Q. 著作権法第38条第1項(本文)に則った無料・非営利の映画上映会であれば、権利者から許諾を得る必要はなく、無断で開催しても構わない、とされていますが、間違いございませんでしょうか?

A. 間違いありません。
なお、上映会で用いるディスク (の収録映像) が「公表された著作物 (38条1項本文) 」に該当するかを確認しておきます。著作権法第3条第1項により「その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が… (正当な権利を有する者により) …作成され、頒布された場合」に発行されたものとなり、著作権法第4条第1項により「発行され…た場合」に「公表されたものと」なります。
従って、通常に市販されている映像ディスクであれば、その映像は公表された著作物となると考えられます。

Q. 市販の映像ディスクには、「この映像ディスクは家庭内での視聴を前提としたものであり、公に上映することを禁じます」のような注意書きがあるものがあります。このような注意書きは、著作権法第38条第1項に則った無料・非営利の上映会における使用を禁じる正当な根拠になり得るのでしょうか?

A. なり得ないと考えます。そのような文言で著作権法以上の制約を課せられるなら、例えば漫画本に「私的使用のための複製を禁じます」と書いておけば容易に著作権法第30条第1項第1号を死文化できることになります。
引用 (著作権法第32条) など、著作権者が最も禁じたい行為でしょうが、それを「引用を禁じます」と一言書けば禁じられるなら、引用に関する議論は全て空しくなるでしょう。要するに、著作権法第30条以下の多くの「著作権の制限」をまとめて容易に死文化できてしまいます。
なお、「中古ゲームソフト事件」(最判2002年4月25日) でも、対象中古ゲームソフトのパッケージには「中古販売を禁止する」旨の記載があったのですが、中古販売は適法とされています。
ここで、映像ディスクに記載されている注意書きを確認してみましょう。典型的なものとしては、およそ次のような内容になります:

このディスクは家庭内での鑑賞を目的とした販売に限って許諾されています。権利者に無断で、複製、改変、公衆送信 (放送、有線放送、インターネットなど)、上映、頒布 (販売、貸与など)、翻訳、翻案などに使用することは法律で禁止されています。

ここで、「家庭内での鑑賞を目的とした販売に限って許諾」と書くことは著作権者の自由ですが、それにより38条の利用を否定できるわけではありません。
また、続く文において、上映を禁じる根拠として「法律で禁止されています」と記載されている点に注目すると、この注意書きは適法な利用を求めているに過ぎず、逆に言えば、法律により認められている場合であれば問題ない、という意味であると考えられます。従って、このような注意書きは、「38条に従った適法な利用を禁止する」という意味にはなり得ないと言えるでしょう。

Q. 一般社団法人日本映像ソフト協会のFAQには次のように書かれています:

市販のDVDビデオも、著作権者が家庭内で視聴する個人のお客様に販売することを許諾していることを考えると、公の上映を目的とするお客様に市販のDVDビデオを販売することは、頒布権という著作権法上の権利 (著作権法第26条、第2条第1項第19号) を侵害することになるのではないかという問題があります。

この指摘に関してはどうお考えでしょうか? このような指摘がある以上は、上映会の開催を自粛すべきなのでしょうか?

A. ディスクを市販することは、著作権法第38条の利用容認であると考えられます。38条の行為は法律により認められている以上、販売店が顧客にディスクを市販 (頒布) する行為、遡って、著作権者が販売店に対し市販 (頒布) を許諾する行為自体がそれ (38条に従った利用) を容認した、ということになります。「家庭内で視聴する個人のお客様に販売することを許諾 (公に上映することを前提としない)」するのは著作権者の主観のため自由ですが、それにより38条の利用を否定できるわけではありません。
仮に、著作権者と販売店との「頒布許諾契約 (要するに仕入契約)」において、38条による利用をする顧客には売却しないという条件が課せられていた場合 (実務的には考えにくいですが)、それは著作権法違反ではなく、販売店が契約違反 (債務不履行) になる可能性が、理論的には存在することになります。ただ、そのような「適法な利用」をする顧客に売るな、という条件が実務上契約書に記載されているとは考えにくいことです。
思考実験としてそのような契約書を想定してみますと、実務上の作業としては販売店が「38条の利用を禁止する」旨の記載を商品パッケージに記載しておくことと同趣旨ですが、それをしても顧客に禁止できず、もともと履行不能の条件ということになります。
すると、そもそもそのような条件で契約を締結する販売店がいるとは思えません。従って、そのような契約書を想定する必要は無いと考えます。「上映会で使用されることを販売店が把握しているかどうか」も同様に意味のない議論であり、なぜなら適法な利用は有り得ることとして当然に想定される (つまり把握している) からです。
以上から、この観点により上映会を自粛すべきとは考えません。ご質問の「指摘」においても「のではないか」という苦しい書き方であり、断定できていないのは、そういうことと思われます。

Q. 「劇場での公開が続いている作品の無料上映会を実施した場合、商業的な映画上映等と競合し,権利者の利益を不当に害することに繋がるのではないか」という指摘があります。この点に関してはどうお考えでしょうか? 権利者がこれを理由として無料上映会の実施を差し止めることを求めた場合、その求めに法的正当性があると言えるのでしょうか? また、実施された上映会の主催者に対し、権利者がこれを理由として損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?

A. 著作権法第38条は、劇場で公開が続いているかどうかを要件としておらず、劇場で公開が続いていることは38条の判断には原則として影響しないと考えられます。
ディスク市販は38条の利用容認であり、わざわざ劇場公開中にディスクを市販しておきながら、38条に沿った利用自体を理由に「権利が不当に侵害された」という主張は困難でしょう。

Q. 上映会の主催者が、上映会の参加者から市販の映像ディスクの提供を募って上映する「持ち寄り上映会」を実施した場合、何らかの法的問題が発生する可能性は考えられますか?

A. 持ち寄りでなければ著作権法第38条に違反しないのに、持ち寄ったら違反する、とは考えにくいことです。考えられるとすれば「無料」要件ですが、これは上映の対価ですから、持ち寄りで持参した者が (そうでない単なる参加者と比べて) 何らかの経済的利益を得るのかというと、得ないのではないでしょうか。そうすると、無料の要件に抵触するとは考えにくいことです。
ただ、頒布権 (著作権法第26条) の問題がありますので、貸与に該当しないようにという点は注意してください。

Q. 無料の上映会を実施することが、名誉・声望権やその他の著作者人格権の侵害に繋がる可能性は考えられますか? もしその可能性がある場合、具体例としてはどのようなケースにおいて侵害に繋がると考えられるのでしょうか?

A. 出所を明示する慣行があるならそれをする必要があるので (著作権法第48条第1項3号)、著作者等を表示する方が良いでしょう。氏名表示権 (著作権法第19条) の問題もありますので。それらを満たす適法な上映において、名誉権等の著作権以外の権利が侵害されるとは考えにくいことです。

Q. 上映会において、映画の全体を上映せずに、ワンシーンのみを上映しても構いませんか?

A. 著作権法第43条では、特定の条件下において著作物を翻訳、翻案等した上で利用することを認めていますが、著作権法第38条についてはこの43条の対象ではないため、翻案ができません。
従って、ディスクの内容をそのまま上映するほかなく、編集して上映するとか一部だけ上映するとかは翻案権 (著作権法第27条) の侵害や、同一性保持権 (著作権法第20条) の侵害となる可能性がありますので、避けるべきでしょう。
なお、ディスク内容がチャプター単位での再生を可能にしている場合であっても、チャプター単位ではなく、基本的に映画全体を丸ごと上映すべきと考えます。ディスク内容がチャプター単位での再生を可能にしていることは、チャプター単位の上映が翻案権や同一性保持権の侵害とならない方向性の事情ではあるでしょう。しかし、公に上映するのは原則として上映権侵害なのに例外的に38条により許容される構造であるところ、43条が38条を挙げていないことは軽視できません。基本的に映画は一個の作品として全体を見てもらう前提で制作されているのであり、一部分しか上映しないのはその映画を改変(翻案)していると解することは不可能ではないですし、同一性保持権侵害の可能性もあるでしょう。

Q. 平面スクリーンでの鑑賞を前提として作られた映像作品を半球ドームシアターで上映した場合、同一性保持権の侵害その他の問題が発生する可能性は考えられますか?

プロジェクターのテスト中。ドームシアターに平面用映像を超大画面投影した場合、こんな感じのサイズ感になるのです。 – Spherical Image – RICOH THETA

A. 著作権法第38条は著作権法第43条の対象ではないため、翻案ができません。平面スクリーン用の映像作品を半球ドームシアターで、ということですが、本来の画面の全部が投影され、登場人物が湾曲により太くなったり細くなったりして元の映像と質的に異なってくるようなことがないなら、翻案権や同一性保持権の侵害とまではいえないと考えます。

Q. YouTubeやニコニコ動画等の動画配信サービスで無料配信されている映像作品を、著作権法第38条第1項に則って上映した場合、何らかの法的問題が考えられますか? なお、前提としては、再生は正規の方法で行い、サードパーティー製のダウンロードツール等は使用しないものとします。

A. PCやスマホに動画データを保存するのかどうかが重要です。保存しない (マイリスト等には動画URLが記録されるだけ、視聴する時は運営サーバーにアクセスしてストリーミング再生する) 場合については、通常はPCやスマホで見るところを、スクリーンに投影して (みんなで) 見るだけですから、 (38条1項本文に抵触しないという前提ですので) 著作権侵害にはならないでしょう。
保存する場合は、まず、その動画が違法にアップロードされたものである場合、それを知りつつ保存 (複製) する時点で著作権法第30条第1項3号に抵触します。それ以外の (適法にアップロードされたもの、又は違法にアップロードされたものだがそれを知らない) 場合でも、複製権侵害となります。
ただ、動画サイトの運営者が複製 (PCやスマホへの保存) を認めている場合は、そういう契約 (複製につき許諾がある) なので適法となります。

Q. 「コンピュータゲームは映画の著作物である」という考えがありますが、コンピュータゲームも映画と同様に著作権法第38条第1項に則って利用しても構わないのでしょうか?

A. 構いません。コンピュータゲームは、著作権法上は判例に照らして劇場用ではない映画と同等と考えられます。プレイ中のコンピュータゲームのモニター画面を流すことは、映画と同じく「上映」と考えられます。
なお、これは判例に顕れたコンピュータゲームが映画の著作物と評価されたということであり、コンピュータゲームは千差万別であるところ、映画の著作物に該当しないコンピュータゲームが無いとは断言できないでしょう。
ですが、38条の対象は著作物全般であり、映画の著作物に限定されているわけではありません。そして、著作物に該当しないコンピュータゲームは想定し難いのであり、いずれにせよ著作物には該当するのであれば、38条も適用されるでしょう。
コンピュータゲームを持ち主以外がプレイすることについても、特段避けるべき必要があるとは考えません。ただ、頒布権 (著作権法第26条) の問題がありますので、貸与に該当しないようにという点は注意してください。

Q. 上映会の主催者が、上映会の後に、上映会の参加者が参加可能な形の打ち上げを開催しても構いませんか? 前提としては、この打ち上げは割り勘制とし、上映会の主催者が利益を得ることがないものとします。この形であっても、打ち上げも上映会の一環と捉えられてしまう可能性があり、その結果として無料の上映会という前提が崩れてしまう懸念があるため、打ち上げを実施すべきではないのでしょうか?

A. 可能と考えます。ただ、上映との対価性がない必要があります。例えば、上映会とは別会場に移動する、上映会参加の特典として参加できるというわけではなく、参加不参加は自由であり、上映会に参加せず打ち上げだけに参加するのも可能といったことです。
支払いについても、参加者は自分の飲食代は自分が支払うということにすべきでしょう。

以上、無料・非営利の映画上映会の開催に関連する法律面の解説の一例として参考にして頂ければ幸いです。