カバー楽曲 (耳コピ、アレンジ) に関連する法律面の解説

『ドームで上映会』の参加者の中には、カバー楽曲 (耳コピ、アレンジ) を使用した自主制作作品の上映を希望する方もいらっしゃるかと思います。そこで、これに関連した法律面の解説を、ここに紹介させて頂きます。

この記事は、秋葉原法律事務所の小早川真行弁護士から頂いた回答書をベースに記事としてまとめ、その後に改めて小早川真行弁護士の監修を受け、許諾を得た上でインターネット上で公開したものです。記載内容は全て2018年3月9日時点のものとなっています。

Q. 無断編曲は同一性保持権の侵害になりますが、楽譜が市販されていない楽曲をできる限り忠実に「耳コピ」により再現した場合には、元の楽曲を完全に正確に再現することは困難です。このような場合にも同一性保持権の侵害に繋がる可能性は考えられますか?

A.ほぼ完璧な「耳コピ」であれば、たとえ厳密には異なっても、同一性保持権の侵害ではないと認定される可能性が十分にあると考えます。
著作権法第20条第2項では、やむを得ないと認められる改変を認めています。
「ウェブサイト転載情報事件」(東京地判2003年10月22日) では、ひらがなと漢字の用字上の相違や「ですます」等の文章末尾の文体上の相違や数字上の相違が認められましたが、実質的には同一として、同一性保持権の侵害はないとされました。
一方、「法政大学懸賞論文事件」では、論文の読点の使い方等の表記方法や改行の有無に関する変更について、一審 (東京地判1990年11月16日) では、意味内容の変更が無いので実質的に同一性ありで同一性保持権の侵害なしとされたのに対し、控訴審 (東京高判1991年12月29日) では変更の必要性が無く、20条2項1号のような「やむを得ない」には該当しないとして、同一性保持権の侵害ありとされています。
この傾向に鑑み、ほぼ完璧な「耳コピ」だが微妙に違う点が「出来る限り同一にしようとしたが、どうしても無理だった」というのであれば、同一性保持権の侵害には当たらないと解される可能性が高いと考えます。その際、楽譜が市販されていないことも関係してくるでしょう。

Q. 例えば男声合唱曲の楽譜をそのまま女声で演奏した場合に、同一性保持権の侵害その他の問題に繋がる可能性は考えられますか?

A. そもそも声で演奏する (つまり「歌う」) のは演奏権 (著作権法第22条、著作権法第2条第1項第16号括弧書) の問題ですので、許諾を得ず「公に」行う場合は演奏権の侵害となります。「公に」とは「公衆に直接…聞かせることを目的として」ということであり、「公衆」とは不特定者のみならず特定多数者をも含みます (著作権法第2条第5項)。
著作権法第43条では、特定の条件下において著作物を翻訳、翻案等した上で利用することを認めていますが、38条についてはこの43条の対象ではないため、翻案ができません。
そして、男声合唱曲を女声で演奏するのは翻案に該当するでしょうから、38条1項により適法となるのは難しいと考えます。許諾を得るなら、その際に男声を女声でという点も許諾を得ればいいことです。

以上、カバー楽曲に関連する法律面の解説の一例として参考にして頂ければ幸いです。